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第45話 司の遅すぎる後悔

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-06-28 06:00:32
 席札の端は、指の腹に食い込んでいた。

 司会の声が広間に響いている。グラスの側面を伝った水滴が、指先のすぐそばへ落ちた。

 さっきの律の声だけが、乾杯の余韻の中に残っていた。

 私は咄嗟に顔を上げる。

「……何の話ですか」

「嫌なら止めます」

 返答ではなく、逃げ道だけが先に差し出された。

 そう返されると、思わず息がひとつつかえた。今まで私の周りにいた人たちは、決めたあとで私に告げることが多かった。家を出て行け。代わりに嫁げ。黙って座っていろ。言葉の形は違っても、最後に残るものは同じだった。

 律は、まだマイクを受け取っていない。

 壇上の手前で相良さんが足を止め、こちらの反応を待っている。会場の視線はまだ律に集まっていて、私が席札を押さえていることに気づいている人は少ない。

「進行は、私の名前で組んであります。榊家の晩餐会だからこそ、止められる」

 律の答えに迷いはなかった。私が止めてほしいと言えば、本当に止めるつもりらしい。

 淡々としていた。

 当たり前のように言われると、どこへ怒りを向ければいいのか分からなくなる。けれど、心地よく受け取るには、私は
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